PCT(Pacific Crest Trail)のオレゴン州セクションは、その平坦な道筋から「Flat and Fast」と称されている区間だ。多くのハイカーにとっての醍醐味は、リサプライに紹介されている町である、リゾート地だ。
実際に歩いて感じたオレゴン州のリサプライ(食料補給)戦略と、寄るべき町の魅力を紹介します。
オレゴン州リサプライについて

オレゴン州はカリフォルニア州の厳しい砂漠や高山地帯を抜けた後の「ご褒美区間」だが、同時に苦しさもある。毎日の歩行距離が延びるのに合わせて、ギアの消耗が激しくなる。天候も厳しく、突然の雷雨に遭遇したこともあった。
単に「食べ物を買う」だけでなく、壊れた道具を買い替え、疲弊した身体を休め、次のセクションへの英気を養う。そのためには、どの町で「ゼロ(休息日)」を取り、どの町を「ニアゼロ(半日滞在)」で済ませるかの戦略が不可欠だ。
何より、アシュランドを出て以降、リゾート地めぐりが始まるのであまりまともな補給ができないという難しさもある。値段が高いのでリサプライには気を使ってしまうのだ。
実際に僕がした戦略
僕がとった戦略は、アシュランドを出てからシスターズまで補給をしないという戦略を取りました。そのため、超大量の食糧を持ち運ぶことになります。大きなザックに入るだけの食料を詰め込んだ覚えがあります。この時の日程は、9日間を想定し10日分を担ぎました。
理由は単純で、リサプライをしたくなかったからです。お金がないという事もありましたが、リゾート地はなんだか居心地が悪いのです。人が多いこともありますが、止まっている事に苦労します。VVRでもそうでしたが、結局リゾート地を歩き回って観光してしまう事も少なくはありません。
作戦としては、10日以内にシスターズという町に行くことでした。ただ、その間にいくつもリゾート地により、休憩したりハイカーと交流したりしました。オレゴン州でも、やはりハイカーとの交流は少ないです。
Ashland(アシュランド):ギア新調のラストチャンス
カリフォルニアからオレゴンに入って最初に出会う本格的な町がAshland(アシュランド)だ。ここは単なる補給地点ではなく、ハイカーにとっての重要な場所の一つと言える。

街の雰囲気と利便性
アシュランドは非常に広く、芸術的な雰囲気漂う美しい街に感じた。多くのハイカーがここでオレゴン入りを祝うために滞在し、今後の準備をしている。特筆すべきは、公共交通機関の充実度。バスを利用すれば近くのショッピングセンターまで容易に移動でき、宿泊代もアメリカの物価高の中では比較的リーズナブルな宿が見つかりやすいのが魅力だった。
リサプライとギアの戦略
アシュランドの近くの町には、多くのアメリカ人ハイカーが信頼を寄せるREI(アウトドア用品店)がある。しかも隣にはアジアンフードで有名な食料品店もある。 実は、アシュランドを過ぎると次に本格的なギアショップに出会えるのは遥か先だ。靴のソールが減っていたり、バックパックにガタが来ているなら、迷わずここで買い替えるべきだと思う。
また、ワシントン州に向けた準備として、ここで「ベアバッグ(熊対策の袋)」を検討するのも賢明な判断だと言える。ベアキャニスターやロープがあれば過度な心配はしなくていいが、PCT hikerには推奨される装備ではある。宇宙食のようなコアなフリーズドライ食品も豊富に揃っており、食のバリエーションを増やす絶好の機会となる。
僕が利用した方法
僕はここに訪れる前に、トレイルエンジェルに連絡を入れていた。その方には、2日間ほど滞在させてもらうことになった。ヒッチハイクをするのが少し難しいので、多くのハイカーがトレイルエンジェルを呼ぶようだ。僕の場合はBurneyfallで偶然出会って連絡先を交換していた方に、お願いをした。その方に、泊めていただきリサプライを行う時もサポートしていただくことができた。
隣町には、REIもあるしトレーダージョーズというアジアンショップもあった。アジアンショップの方は割高だが、久しぶりに見た日本の食材にテンションは上がる。何も買わないけど。REIに立ち寄るならば、Ursackのベアバッグを購入しておくとワシントンで焦らなくて済む。
Mazama Village at Crater Lake(マザマ・ビレッジ):絶景と小さな休暇
オレゴン州最大のハイライト、クレーターレイク国立公園の拠点となるのがマザマ・ビレッジになる。新婚旅行で訪れている日本人と遭遇したほど、観光客が多い。何気に初めてPCTハイカー以外の日本人と出会った。

観光客との交流と感動
クレーターレイクは観光地としても超一流で、世界中から人々が集まる所だ。ここで出会う観光客の方々は、PCTハイカーなんて知らないだろう。だが、一部の観光客はボロボロの格好で歩く僕たちに「あなたたちはヒーローだ!」と声をかけてくれることもあった。トレイルでの孤独な戦いの中に、こうした温かい応援が心に染みる。非常に貴重な経験ができたと思っている。少なくとも、日本で歩いていてもそんな話を聞く事はないだろう。
設備と注意点
マザマ・ビレッジにはハイカー専用のキャンプサイトがあり、無料のシャワーやコインランドリー、デバイスの充電スポットが完備されている。 補給に関しては、併設のギフトショップやコンビニで最低限のものは揃えることができた。医療用クリームなどの日用品も手に入るのだが、本格的なハイキングギアの販売はなかった。あくまで食料と身体のケアに集中する場所と捉えておくと良い。また、自分のリサプライ内容に拘りがあるのならば、可能な限り補給箱を利用した方が良いと思う。
僕の実体験
実体験ベースで話をすると、ここについた時はポイズンオーク被害二日目だった。当てていた布やガーゼは無意味になる程で、シャワーなど浴びる事ができない状況である。そのため、ここではゆっくりと休憩して、そのままクレーターレイクに向かった。
ハイカーボックスは非常に充実していた。大量の食料が入っており、この時一緒にいた日本人のハイカーの方は、フルリサプライができたと言っていて非常に驚いた。彼がフルリサプライしても、僕もいくつかのラーメンとグミを手に入れる事ができた。キャンプ場の一角がPCTハイカー向けのスペースになってる。
Sisters(シスターズ):小さな休息の町
個人的に最もおすすめしたい町の一つが、このシスターズ。美しい街路樹並木と一生続くのかと思うまっすぐな道。その途中に急遽顔を見せる小さな町が、シスターズです。この街をオレゴンで一番の町と評価する人もいる。

街の構造とアクセスのコツ
街路樹が続く美しい区間にポツンと現れるこの町は、リサプライをするだけであれば完璧だと思う。縦に長い構造だが、スーパーマーケットやファストフード店が密集しているため、徒歩での買い出しが非常にスムーズに行えた。 町外れにはキャンプ場があり、多くのハイカーがそこでテントを張って一晩を過ごしている。僕のように、一泊もせずにトレイルに戻るハイカーも少なくない。
ヒッチハイクのリアル
シスターズへ向かう際は、高速道路の入り口などでヒッチハイクをすることになる。交通量が多くスピードも出ているため、最初は「捕まるかな?」と不安だった。しかも総長は意外に冷え込むので、要注意だ。30分もあれば優しいドライバーが止まってくれたが、人によっては一時間ほど待つらしい。 帰りは日本に来たことがあるという親切なおじさんのピックアップトラックに乗せてもらった。こうした「ハイカー・フレンドリー」な土壌があるのも、この町の大きな魅力だと思う。
PCT DAYSで気が付いたのだが、どうやらこの時に乗せてもらった人が、ジョリーギアのオーナーさんだった。驚きである。彼とはそこまで話をできなかったが、お礼を伝えておいてくれと伝える事ができたのは良かった。世の中、何が起こるか全くわからないものである。
Big Lake Youth Camp(ビッグ・レイク・ユースキャンプ):岩場の中のオアシス
溶岩地帯(ラバ・ロック)のゴツゴツとした岩場を歩き続け、精神的にも肉体的にも疲労がピークに達する頃。突如として現れる救いの手がこの小さなリゾート地になる。溶岩地帯では足を痛めやすいから、要注意だ。このBig Lake Youth Campには、セクションハイカーにお勧めされて立ち寄ることに決めた。無料シャワーと聞いたら行くしかない。

ハイカーへの献身的なサポート
ここは宗教団体が運営しているキャンプ施設と聞いた。それでも、ハイカーを非常に温かく迎え入れてくれており、非常に感謝している。
- ドネーション制(寄付)による食事
- シャワーとランドリー完備
- 荷物の受け取りサービス
特にラバ・ロックの乾燥した区間で喉を痛め、足の裏を痛めた身としては非常に感謝敷いている。ここのホスピタリティはホントに有り難いもので、半日ほど休憩した。宿泊はできませんが、日中の休憩スポットとしては最高だ。
迷わないためのアドバイス
広大な敷地なので、どこがハイカー用のスペースか迷うことがある。地図アプリ(FarOutなど)のコメント欄を事前にチェックしておけば、スムーズにたどり着けるだろう。僕が訪れた時はトレイルランのイベントと重なって混雑していたのだが、それでもハイカーを歓迎するムードは変わりなく残っていた。案内の為のスタッフもたくさんいらっしゃるので、聞いてみると良い。
ここで得られたフリーシャワーとフリーランドリーは本当に助けられた。ポイズンオークにヒットしたので、早くギアを洗いたかったしシャワーもしたかったのだ。この頃には、厚手のガーゼで傷口を覆えば大丈夫なくらいには、回復して来ていた。痛みと痒みは残っているが、我慢できる。
Cascade Locks(カスケードロックス):オレゴンの終点、そしてワシントンへの架け橋
標高がほぼ0メートルまで下がり、目の前に雄大なコロンビア川が広がる場所。ここがオレゴン州の終着点、カスケードロックスだ。ここに来る途中で足を痛めたので、実はいい思い出がない。

補給の裏技:1ドルバスで隣町へ
カスケードロックス自体はレストランが充実しており、グルメを楽しむには最適だ。一方で、スーパーでのリサプライにはあまり向いていないのが現状。 賢いハイカーたちが実践しているのは、1ドルで乗れるバスを利用して隣町のウォルマートへ行くという方法だった。ここで大量に安く食料を買い込み、カスケードロックスの郵便局から先の町へ補給箱(Resupply Box)を送るのが、プロハイカーの定石らしい。僕は何も送らなかった。
達成感に浸るひととき
街の公園にはPCTのモニュメントがあり、多くのハイカーが「オレゴン走破」の記念撮影をしている。有名な「Bridge of the Gods(神々の橋)」を渡れば、そこからはもうワシントン州。この街での滞在は、単なる補給以上の、一つの大きな区切りを感じさせてくれる。
まとめ
ここまで来ると、ある程度の歩き方は身についてくる。そのため、リサプライに関死しては詳細に取り上げていない。そもそも、僕は殆ど歩き通してしまったので、実はリサプライを本格的にしたのは、二か所だけだった。それでも、リゾート地は少し立ち寄ると面白い事があった。気が向けば、様々な所に立ち寄ってほしい。
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