登山・ハイキングに必要な水分量と算出方法に関して

知識や経験
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登山やハイキングで意外と悩むのが、「水を何リットル持っていけばいいのか」という問題です。

少なすぎれば脱水症状や熱中症の危険がありますが、多すぎれば1Lごとに約1kg重くなり、歩行の負担になります。

僕はこれまでPCT約4,200kmと国内ロングトレイルを合わせて6,000km以上歩いてきました。その経験から言えるのは、「とりあえず3L持てば安心」という単純な話ではありません。必要な水分量は気温・荷物・行動時間によって大きく変わります。

この記事では、実際の経験と『ハイキングの科学』で紹介されている計算式をもとに、登山で必要な水分量を分かりやすく解説します。

結論|登山で必要な水分量の目安

日帰り登山なら、まずは下の表を基準にすると大きく外しません。

行動時間春・秋真夏
1〜2時間0.5〜1L1〜1.5L
3〜4時間1〜1.5L1.5〜2.5L
5〜6時間1.5〜2.5L2.5〜3.5L
7〜8時間2〜3L3〜5L

迷ったら春秋は2L、真夏の日帰りは3Lを一つの基準にするのがおすすめです。

ただし、この数字はあくまで目安です。水場の有無や荷物の重さ、気温によって必要量は増減するため、後半で紹介する計算方法を使うとより正確に準備できます

なぜ登山で水分補給が重要なのか

登山中の水分補給には、大きく3つの役割があります。

  • 熱中症の予防
  • 脱水症状の予防
  • 判断力・パフォーマンスの維持

特に登山では、喉が渇く頃にはすでに脱水が始まっていることも少なくありません。

体重の1.5〜2%失うだけで判断力は低下する

運動中は汗によって水分が失われます。

体重の約1.5%の水分を失うだけでも、作業能力や集中力が低下し、不安感が増えることが報告されています。2%を超える頃には頭痛やめまいなどの症状が現れやすくなります。

脱水の程度主な症状
約1.5%集中力低下・判断力低下
約2%頭痛・めまい・疲労感
3%以上嘔吐・著しい脱力
重度意識障害・救急対応が必要

登山では道迷いや転倒が命に関わります。脱水は「喉が渇くだけ」の問題ではなく、安全に直結するリスクです。

頭痛は結構まずい

登山やハイキングでは脱水が原因の頭痛を何度も経験しています。あたらめてこの表を見ると、「結構ヤバい状況だな」というのが分かります。夏場では、山頂でクールダウンをしていない時間では常に汗をかき続けており、脱水症状に陥りやすいです。それ以上脱水が進むと、嘔吐になり登山ができなくなります。

PCTでは疲労感で脱水に気が付いた

PCTでモハーベ砂漠を歩いている時は、極度の疲労感を感じていました。水を飲み日陰でゆっくりと休憩したら、歩けるようになりましたが思い返せば脱水症状なのでしょう。長時間の直射日光と炎天下に晒され続け、水分は必要最低限。温存を考えすぎて、飲み切れていませんでした。正直、きつかったです。

脱水症状の初期サイン

次の症状が出始めたら、水分不足を疑いましょう。

  • 喉の渇き
  • 尿が少なく濃い色になる
  • 口の乾燥
  • 軽い頭痛
  • めまい
  • 集中できない
  • 身体がだるい

冬山でも乾燥によって脱水は起こるため、夏だけの問題ではありません。冬時期は、夏場よりも脱水に気が付かないため注意しましょう。

水を飲み過ぎるのも危険|水中毒にも注意

先日、山で出会ったハイカーが「熱中症対策だから水だけをたくさん飲んでいる」と話していました。

実は登山では、水分不足だけでなく、水だけを飲み過ぎることにも注意が必要です。

大量の汗をかくと、水だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。その状態で短時間に大量の水だけを飲み続けると、血液中のナトリウム濃度が低下する低ナトリウム血症(水中毒)を起こすことがあります。

低ナトリウム症の症状

症状は脱水症状と似ています。

  • 頭痛
  • 吐き気
  • めまい
  • 倦怠感
  • 重症では意識障害

「たくさん飲めば安全」ではなく、こまめに飲み、必要に応じて電解質も補給することが大切です。水だけ飲んでいれば安全は、誤情報です。

1時間あたりの安全な摂取量の目安

低ナトリウム症の対策は簡単で、水を分割して摂取することです。一般的には、1時間あたり400〜800mL程度を目安に分けて飲む方法が推奨されています。

行動状況1時間あたりの目安
春・秋の登山400〜600mL
真夏の登山600〜800mL
強い発汗・高負荷最大1L程度を数回に分けて補給

500mLのボトルなら、「1時間で約1本」を超えるような暑さでは、水だけでなく塩分や電解質も意識すると安心です。

登山で必要な水分量を計算する方法

目安だけでなく、自分に合った必要水分量は計算することもできます。これは、様々な計算方法があります。あくまで目安だと思っておきましょう。もちろん、予備の水も余裕があれば運びたいですね。

簡単に計算する方法

日本山岳協会などでも紹介される簡易式は次の通りです。

(体重+荷物)×行動時間×5=必要水分(mL)(体重+荷物)\times行動時間\times5=必要水分(mL)

簡単にですが、このようにして計算できます。もちろん、気温が高すぎて立っているだけで汗をかき続けるような状況では、増えると思われます。

実際に計算してみる

例えば、

  • 体重60kg
  • 荷物10kg
  • 行動時間6時間

なら、

70×6×5=2100mL70\times6\times5=2100mL

となり、約2.1Lが目安になります。

この計算式はシンプルですが、気温や運動強度を考慮していないため、夏場では少なく見積もられる場合があります。幾つかの計算を表にまとめてみました。

行動時間体重+荷重必要水分量
650kg1.5L
660kg1.8L
670kg2.1L
680kg2.4L

より正確な脱水量の計算式

『ハイキングの科学』では、気温と運動強度(METs)を含めた計算式が紹介されています。

脱水量=(0.0176×気温+0.315)\timesMETs×(体重+荷物)×時間脱水量=(0.0176\times気温+0.315)\timesMETs\times(体重+荷物)\times時間この式では、

  • 気温が高いほど発汗量が増える
  • 荷物が重いほど必要水分が増える
  • 運動強度が高いほど脱水量が増える

という登山の実態に近い計算ができます。一般的な登山では6〜8METs程度とされるため、迷ったら7METsを使えば十分実用的だと思います。

実際に計算をしてみる

6時間・20℃・7METsで実際に計算をしてみる。直感的な山岳会の計算よりも、若干少ない計算結果に落ち着いている。秋や春では十分実用的な計算ではないだろうか。

体重+荷重必要水分量
50kg1.40L
60kg1.68L
70kg1.96L
80kg2.24L

二つの計算結果を比較してみる

体重+荷重山岳会ハイキングの科学
50kg1.50L1.40L-0.10L
60kg1.80L1.68L-0.12L
70kg2.10L1.96L-0.14L
80kg2.40L2.24L-0.16L

基本的には、同じ重量と時間では「山岳会の方がやや多い」計算結果になっている。ただ、ハイキングの科学で紹介されている脱水量の計算式では、気温まで考慮されている事から気温条件を変更すると一気に変わる。(今回は6時間・20℃・7METsで計算している)

僕が実際に持ち歩く水分量

理論だけでなく、実際の携行量も紹介します。

山行の条件出発時の携行量
春の低山(日帰り)1.5L
20kmおきに補給のできるロングトレイル1.5〜2L
北アルプス夏(日帰り)約3L
水場のない稜線4〜5L
PCT砂漠区間5〜6L

意外かもしれませんが、ロングトレイルでは常に大量の水を持っているわけではありません。水場の位置が分かっている日は2〜3L程度で歩き、次の水場までの距離に応じて補給量を調整しています。

水がなくなるのが怖い

僕は水がないという状況が怖い為、常に多めに水分を持ち運んでいます。一日の脱水量が2L程度で2L程度の水分を持っていれば十分、というのは知識としても経験としても知っています。身をもって納得しているのですが、やはり不安と緊張は嫌です。「水場があるだろうか」「水が持つだろうか」などを考えるくらいなら、「最初から担ぐ」というスタイルになります。

水場がある縦走は「携行量」と「必要量」を分けて考える

必要水分量が4Lでも、必ず4Lを背負うとは限りません。例えば山小屋や沢で補給できるなら、実際の携行量は半分程度に抑えられます。

条件必要量出発時
春秋の日帰り3〜4L1.5〜2L
真夏の日帰り4〜5L2〜3L
水場なし縦走4〜5L4〜5L

この「必要量」と「携行量」を分けて考えるだけで、ザック重量をかなり減らせます。軽量化をするのであれば、こうした判断も重要ですね。

水分補給は「喉が渇く前」が基本

歩いていると休憩のたびに一気飲みしたくなりますが、おすすめは15〜20分おきに少量ずつ飲む方法です。僕自身もロングトレイルでは、止まって大量に飲むより、歩きながら少しずつ補給する方が疲れにくいと感じています。

また、行動が終わった後も水分は必要です。調理や体温を下げる、水分補給としても重要な役割になります。

ロングトレイルでは水をどのくらい残すか

テント泊やロングトレイルでは、基本的には次のようなことを意識しています。

  • 調理用
  • 次の日の行動分
  • 就寝前に飲む分
  • 翌朝の朝食用

これらを考慮し、1L前後を残すようにしていました。夜中に喉が渇いて眠れなくなることは意外と多いので、行動終了時の水も計画に入れておくと安心です。山小屋が近い場合は、山小屋で気持ち多めに購入しておくと、良いでしょう。

よくある質問

Q. 日帰り登山なら2Lで足りますか?

春秋なら多くの山で足りることが多いです。ただし真夏や標高差が大きいコースでは3L程度を目安にしてください。日帰りだから安心、という事はありません。体力次第では、富士山などの大きな山も日帰りで行けます。

Q. ハイドレーションと水筒はどちらがおすすめ?

こまめに飲める点ではハイドレーションが便利ですが、残量が見えにくいという欠点もあります。僕はソフトボトルとペットボトルを併用することが多いです。ハイドレーションを使用する場合は、慣れも必要ですが、個人的にはおすすめです。

Q. 電解質は毎回必要ですか?

短時間の軽い登山なら水だけでも問題ないことが多いですが、真夏や大量に汗をかく日はスポーツドリンクや電解質タブレットを併用すると安心です。電解質は摂取してすぐに効果があるわけではない為、効果的にタイミングを見て摂取しましょう。

Q.熱中症は高山でもなりますか?

標高の如何に寄らず、直射日光をん長時間浴びる事により熱中症になる可能性があります。日本の山々でも、森林限界を超えると太陽光が厳しく、地面からの照り返しも容赦ありません。水分の摂取は必要不可欠だと思います。

Q.結局度の計算式が良いの?

実際に6,000km歩いて感じるのは、春秋は山岳会の簡易式で十分実用的です。一方で、真夏や荷物が重い縦走では、気温まで考慮した『ハイキングの科学』の計算式の方が、実際の必要水分量に近いと感じています。

まとめ

登山の水分量に絶対の正解はありません。

しかし、行動時間・気温・荷物を基準に必要量を考えれば、「重すぎる」「足りない」という失敗は大きく減らせます。僕自身も6,000km以上歩く中で、春秋は約2L、真夏は約3Lを一つの基準にしながら、水場の位置を見て調整してきました。

まずは今回紹介した目安を基準に、自分の歩き方や季節に合わせた水分計画を立ててみてください。

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