PCT北カリフォルニアを歩いた感想と攻略のカギについて

ロングトレイル

 PCT(Pacific Crest Trail)のシエラ区間を抜けたハイカーを待ち受けるのは、豊かな緑と湖、そして「想定外の乾き」が支配する北カリフォルニアです。本気で暑い区間があるので苦労します。

「シエラを越えたからもう大丈夫」という油断は禁物。今回は、実際に歩いて分かった北カリフォルニアの過酷な現実と、その先にある絶景、そして攻略のための具体的な注意事項をまとめました。

北カリフォルニアの洗礼:暑さと「虫」の対策

シエラの雪の世界から一転、PCTの北カリフォルニアはPCTで最も「予測不能」が多いエリアかもしれません。唐突に表れる絶景、乾燥地帯、暑さ、ポイズンオーク、気温差、大きな川など、想定外の要素が多くありました。

  • 40度を超える酷暑: 意外かもしれませんが、南カリフォルニアの砂漠より暑く感じることが多々あります。気温が40度を超える日も珍しくなく、体力と水分が容赦なく奪われます。シエラの入り口にあった、モハーベ砂漠を彷彿とさせる過酷さでした。
  • タホ周辺の虫(バグ): 北カリフォルニアの玄関口、タホ・リム・トレイル付近では大量の虫に遭遇します。ヘッドネットなしでは正気を保てない時間帯もあるため、装備から外さないようにしましょう。特に緑が深くなってくると、止まれないほどです。
  • 湿度と「日本の夏」: 水場が豊富なエリアでは湿度が一気に上がります。まるで日本の夏の低山を歩いているような、まとわりつく暑さはアメリカ西海岸のイメージを覆す体験でした。森の中を歩くときは、本当に日本の真夏の低山でしたね。

個人的に辛いのは、虫。何を言っても虫。バグネットの正面が全て蚊で埋まった悲劇は忘れられないし、前を歩くハイカーの背後霊のように蚊が群がっているのを目視で来たのは一生のトラウマだ。

行程管理とベアキャニスターのルール

シエラのような積雪による制限がないため、行程は再び「5日1サイクルの補給」といった本来のリズムに戻すことが可能です。行程計画を立てるだけなら簡単でした。ただし、装備の切り替え時期には注意が必要です。

ベアキャニスター(熊缶)はいつまで必要?

  • シエラシティ(Sierra City)まで: ルール的にはこの町付近まで必要とされています。従来はKMSで手放すことができましたが、タホリムトレイルで必要(約50mile)であるのでこの街まで必要です。タホリムトレイルで保持していないことがレンジャーにバレた場合には、罰則がある場合があります。
  • ラッセン火山国立公園この国立公園内でキャンプをする場合はベアキャニスターが必須です。しかし、公園区間は約20マイル(32km)程度になります。「1日で一気に通り過ぎる」行程を組めば、キャニスターを持たずにパスすることが可能です。行程次第ですが、ラッセン火山国立公園前には大きな町があるので、時間調整して歩きましょう。

ベアキャニスターのルールは毎年変わっていきます。2025年の僕のルールでOKでも2026年以降は不明です。地図アプリを確認するようにしてください。PCTAが毎年更新してくれています。

荒れたトレイルと倒木

PCTの北カリフォルニアは、全区間の中でも倒木が多く、トレイルが崩落している箇所が目立ちました。体力の消耗に加えて、ルートファインディングが必要な場面もあるため、精神的なタフさが求められます。森のように木々に囲まれ、草木に覆われたトレイルは歩きずらいです。見えない倒木に躓いて転倒する可能性もあるので注意しましょう。

倒木を超える際には、滑落に注意してください。また、倒木の上を歩くときもあるので、滑らないようにしてください。僕は、一度ワシントンで倒木を超えるのに失敗して、崖から落ちそうになりました。倒木を渡るときに落ちて、大けがをした女性もいました。

水場管理の「地獄」とリプライ(補給)の現実

PCTの北カリフォルニア攻略の鍵は、徹底した「水場への意識」です。正直、シエラの区間で緩んだ水管理の意識は、北カリフォルニアのハイキングでは牙をむいてきます。PCTハイキングでは水管理が重要だと再確認しました。

  • オールドステーション周辺の乾燥: オールドステーション(Old Station)周辺は極端に水場が少なく、水の管理に非常に苦労しました。気温も一気に上がり、森の区間を抜けて乾燥地帯を歩くようになります。
  • Burney周辺の20マイル・ドライセクション:オールドステーション以降は、 気温40度の中、約32km(20マイル)も水がない区間があります。控えめに言って「地獄」でした。この区間を歩く際は、重さを覚悟してでも多すぎるほどの水を持つことを強く推奨します。
  • ヒッチハイクの難しさ: 町へ降りるためのヒッチハイクがなかなか捕まらず、苦労するハイカーを多く見かけました。移動時間には余裕を持っておきましょう。自分の友人は、余りに待ち時間が長くトレイル・エンジェルを呼んだが、ほかのハイカーに出払っていて大変だったと言っていました。

徐々に田舎を歩くようになっていくPCTですが、その分だけヒッチハイクなどのレベルが上がっていきます。振り返ってみると、北カリフォルニア以降は、あまりヒッチハイクをすることがなかったように思います。

水場の管理に関して

基本的には行動中は1Lを持っていればいいと思っていましたが、そうも言えなくなりました。シエラの標高が高く、同時に水も多い区間では殆ど補給を必要としませんでした。しかし、連日の疲れや栄養の偏りが顕著になり始めた北カリフォルニアでは、思ったようにハイキングに集中できません。その結果、思った以上に喉が乾いたり水を飲んだりしていました。

区間としては、オールドステーションからバーニーの町までが一番乾燥していました。その後の、バーニーフォールに立ち寄った時には、45度近い気温の中を歩くことになり苦労した覚えがあります。テントサイトも限られている区間であり、どこで水を補給しどこまで耐えて、どこで寝るのかを計画的に行うべきでしょう。ウォーターキャッシュがいくつか用意されていましたが、それは運次第ですね。3Lほど持ち歩くのが良いと思います。

北カリフォルニアの見どころ:多様な景観と孤独

苦労が多い反面、この区間の多様性はハイカーの心を癒してくれます。苦しく辛い事が多いですが、緑豊かな景観もあれば、乾燥した大地を歩くこともあります。シャスタ山を含め、見ていて気持ちの良い景観も多く、非常に歩いていて楽しい区間でもありました。

絶景スポット

  • Burney Falls(バーニー・フォールズ): 水量豊かな滝と周囲の深い緑は、まさにオアシス。非常に暑いエリアですが、その分、滝の冷気が身に沁みます。暑くてダウンしたため、川を眺めながら休憩しました。
  • Mount Shasta(マウント・シャスタ): 遠くからでもその姿を確認できるシャスタ山は、圧倒的な存在感でカッコいいの一言。実際に登頂するPCTハイカーは稀ですが、見ているだけでモチベーションが上がります。
  • 豊かな湖と森: 乾燥地帯は一部で、全体的には湖が多く、アメリカの広大な自然を「緑」の観点から楽しめます。大自然の中に身を置く感覚は、非常に貴重です。シエラは岩稜帯と水ですが、北カリフォルニアは緑と水の印象です。

見どころ豊かですが、乾燥地帯もあれば高所域もあるのが特徴です。多様性にとんだ区間で、柔軟に対処していくことを意識しましょう。僕は暑さになれず、ダウンしてしまいました。シエラと比べて本当に暑い事が、苦しい所ですね。

変化するハイカー同士の距離感

シエラでは常に誰かが周囲にいる安心感がありましたが、北カリフォルニアに入ると一気に出会う人数が減ります。「孤独」を感じる瞬間も増えますが、それは自分自身と向き合い、自然と一体化するPCT本来の醍醐味でもあります。人と出会うことがない分、街中では多くの人と出会います。仲間がいるなと実感する一方で、ビールパーティーを開くことも増えました。北カリフォルニア最後の町であるエトナでは、盛大にBBQを行いどんちゃん騒ぎをしました。

まとめ:北カリフォルニアを歩くための3つの教訓

  1. 水場マップを過信せず、余裕を持った保水を。(特に40度超えの日)
  2. ラッセン国立公園は1日で抜ける計画を立て、荷物を軽量化する。
  3. 「緑のトンネル」の孤独を楽しみ、日本の山との違いを堪能する。

北カリフォルニアは、身体的なタフさと戦略的な行程管理が試される区間です。ここを乗り越えれば、いよいよオレゴン、そしてワシントンへの道が開けます。

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