トレイルネームとはなに?Hike Your Own Hikeの哲学

知識や経験

はじめに4,000kmを歩き抜くのは「根性」ではないことを明記していく。根性論で半年間歩くことができるほど、僕はまともな人間ではない。むしろ我慢弱く根性はない。

実際にPCTを完走、あるいは長期間歩き続けた多くのハイカーが口を揃えて言うのは、「大切なのは楽しむ事」ということ。トレイルネームはその象徴ともいえる。

トレイルネームとは何か?

PCTでは多くの場合、本名ではなくトレイルネームで呼び合います。これは行動や癖、失敗談から自然に付けられる「二つ名」のようなものです。多くのハイカーが持っているもので、トレイルを歩いている間に、勝手にできてきます。

トレイルネームとは何か

トレイルネームというのはニックネームだ。名付けてくれるのは、ハイカーやトレイルエンジェルなど、様々な人たちだ。トレイルネームの由来は様々です。これはトレイル上のニックネームですが、自己紹介する時もトレイルネームで自己紹介します。だから、本名を知らない友達がたくさんできました。僕も、自己紹介するときはどこでもトレイルネームである「Soda」で通していました。

僕のトレイルネームの紹介

僕のトレイルネームは 「Soda(ソーダ)」。理由は単純で、街に降りるたびに2Lのソーダを一気飲みしていたからです。爆飲みしている時に「ビッグソーダ」と名付けられ、「ソーダ」に落ち着きました。多くのハイカーや町の人は、僕の事をソーダと呼びます。

それ以外にも、幾つかトレイルネームがありました。例えば「Happy(ハッピー)」です。これは、僕が会社を辞めて理由などを聞いて、「お前はトレイル上で幸せになった」や「ずっと楽しそうで幸せそうなやつ」という所から来ました。

最初のトレイルネームは「little orca(リトルオルカ)」でした。これは、僕が小さなぬいぐるみをつけてハイキングをしていたからです。PCTに行く際に利用していたウエストポーチには、須磨シーワールド製の小さなぬいぐるみキーホルダーをつけて行ったからです。

他にも、幾つかありましたが忘れてしまいました。ゴールした後に、トレイルエンジェルたちの所に戻ると、「ハングリーボーイ」と呼ばれていました。南カリフォルニアのトレイルマジックで、それしか言えなかったことを覚えていた人がいたようです。歩き終えても何故か名前が増えます。

トレイルで出会った印象的な名前たち

トレイルネームには、その人のトレイルでの生き方が凝縮されています。その名前を聞くだけでも面白く、そのエピソードと共に書籍として紹介している人もいます。ここでは、僕がトレイル上で出会った仲間たちの名前を紹介します。

  • Wrong Way;自信満々で逆走してしまったエピソードから
  • Pepperoni;理由は知らないが本人はペパロニが好きだった。
  • Keep Going;オレゴン州で休憩が多く、虫から逃げる為に多くのハイカーから「キープゴーイング!!」と注意を受け続けたから。
  • chocolate pie;コンビニで売っているchocolatepieを食べていた時に名付けられたらしい
  • Shadow;南カリフォルニアエリアでいつも日陰で休憩をしていたらしい。
  • Woody;食事用のスプーンを無くし、木の枝で代用していたから。
  • Black Sky;夜通し歩くのが好きで、自発的に言い続けたら名付けて貰えた。
  • Muffin;仲間内でトレイルネーム名づけ大会をした際に名付けられたらしい。

本名や社会的な肩書きを離れ、「Soda」として生きる数ヶ月は不思議だった。本名を忘れてしまうほどになじんでしまい「リアルネームは?」と聞かれて思わず疑問符を浮かべてしまうほどだ。文字通り、もう一つの人生を歩いているような感覚だった

PCTの「マイルール」は自分を守るための安全装置

PCTには、パーミットの携帯やLNT(Leave No Trace)といった公式ルールがあります。しかし、それ以上に重要なのが自分自身のためのマイルールです。当たり前ですが、法律やLNTを守る方が優先です。ルール違反しない範囲でマイルールを設けるのです。

「無理をしない」をルール化する意味

完走を急ぐあまり、

  • 疲労骨折
  • 慢性的な故障
  • メンタルの燃え尽き

に陥るハイカーは、毎年少なくありません。脱落して行くハイカーが多いシエラ区間では、無理に距離を伸ばしたハイカーが数名、脱落しました。マイルールを持つ最大のメリットは、「無理をしない選択を、迷わず取れること」です。

例:行動のルール

  • 2時間ごとに必ず靴を脱いで足を休める
  • 午後の一番暑い2時間はシエスタ(お昼寝)を取る
  • お昼ご飯を食べたらコーヒーを一杯飲む
  • タバコのルールを厳格化

例:街でのルール(儀式)

  • 街に降りたら必ずホテルに泊まる
  • 2Lのソーダを飲む
  • デザートを毎日食べて、毎日シャワーをする

こうした「自分との約束」があることで、過酷な環境の中でも自分を見失わず、旅にリズムと厚みが生まれます。街中でルールを定めている人も、ソコソコいましたよ。因みに、2Lソーダを飲むのは、僕のマイルールです。

Hike Your Own Hike|PCTを貫く究極の哲学

Hike Your Own Hike(HYOH)──「自分のハイキングをしろ」

これは、アメリカにあるトレイル文化の一つです。そしてそれは、PCTでも脈々と受け継がれているものでもあります。自分の旅をしろ、自分だけのハイキングをしろ、という事。意味は簡単で、僕にとってはとても馴染みやすいものでした。町中で人に相談しても「好きにしたらいい」とよく言われました。

  • 誰かと競わなくていい
  • 歩く時間を決めてもいい
  • 街でアイスを食べ続けてもいい

すべては、あなたの自由。トレイルに戻りたくなればトレイルに戻り、諦めたかったら諦めればいいのだから。

マイルールを持つことは、自分を縛る行為ではない事に留意してほしい。それはむしろ、自分らしい旅の輪郭をはっきりさせるためのコンパスなのだから。自分だけの旅をする、自分だけの思い出を作る。人のために何かするのは美徳だが、まずは自分で自分を救い上げよう。

まとめ|あなただけの「こだわり」がPCT完走への鍵

これからPCTを計画しているなら、装備リストを埋める前に、ひとつだけ決めてみてほしい。この旅をして、あなたは何がしたいのだろうか。名声が欲しいのか、その記録が欲しいのか、ただやりたいだけなのか、旅の一環なのか、英語の勉強なのか。自分に嘘さえつかなければ、本当に何でもいいはずなんだ。

  • 山頂で必ず豆からコーヒーを挽く
  • 特定の銘柄のソーダを飲み干す
  • 週に一度は何もしない日を作る

その小さなこだわりが、4,000kmの道のりを「ただの移動」から「忘れられない旅」へと変えてくれるはずだ。

あなたなら、どんなマイルールを持って歩きますか?

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