「トレッキングポールはいらない?」
登山を始めたばかりなら、一度は考える疑問だと思います。ザック、登山靴、レインウェア、水筒など、登山には必要な道具がたくさんあります。その中でトレッキングポールは、なくても歩ける道具です。
僕はPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)や四国遍路などを含め、これまで6,000km以上歩いてきました。その経験から言うと、僕はトレッキングポールは必須装備だと考えています。
理由は単純です。足への負担を分散でき、長時間歩いたときの疲労感が違うからです。特に翌日も歩く必要があるロングトレイルでは、「今日歩けるか」だけではなく、「明日も歩ける状態を残せるか」が重要になります。
これまでの経験をもとに、具体的に紹介します。詳しいトレッキングポールに関する記事は下記から

結論|トレッキングポールは「いらない」のではなく、歩く距離によって必要性が変わる
まず結論を整理します。基本的には必須ですが、歩く距離によってその必要性が変化してきます。
| 登山スタイル | 僕の考え |
|---|---|
| ロングトレイル | 必須に近い |
| 数日間の縦走 | かなりおすすめ |
| 長時間の日帰り登山 | 使いたい |
| 3時間程度の日帰り登山 | 必須ではない |
| 軽いハイキング | なくても問題ない |
| 最低限の装備で始めたい | 優先順位は低め |
僕が特に重視しているのは、歩いた後の疲労感です。ロングトレイルでは、一日歩いて終わりではありません。数週間、ときには数か月にわたって歩き続けます。
だからこそ、1日の歩行を少しでも楽にすることだけではなく、翌日のために脚を残すことが重要になります。
トレッキングポールはいらないと言われる理由

そもそも、なぜ「トレッキングポールはいらない」と言われるのでしょうか。検索をしていると、「トレッキングポール不要」や「トレッキングポール 邪魔」、「トレッキングポール 要らない」という検索が出てきます。
この不要や要らないという、一番大きな理由は、ポールがなくても歩けるからだと思います。
何故トレッキングポールが無くてもいいのか?
- 登山靴がなければ歩けない場所はあります。
- 雨具がなければ危険になる状況もあります。
- 水や食料は当然必要です。
- トレッキングポールがなくても、多くの登山道は楽しく歩けます。
そのため、「なくても歩けるなら必要ない」と考えるのは自然なことです。また、ポールそのものにも重量があります。両手が塞がるため、岩場などでは邪魔になることもあります。正直、邪魔に感じるシーンは日本では多いでしょう。
ザックへ収納したり、取り出したりする手間もあります。つまり、トレッキングポールは絶対に必要な道具ではありません。
ただし、「絶対に必要ではない」ことと、「使う意味がない」ことは別です。僕は長距離を歩くようになって、この違いを強く感じるようになりました。
僕がロングトレイルでトレッキングポールを必須だと考える理由
僕がロングトレイルでポールを使いたい最大の理由は、足だけで身体を支え続けなくてよくなるからです。歩行中にポールへ体重の一部を預けることで、腕も使って身体を前へ運べます。もちろん、ポールを使ったからといって足の負担がすべてなくなるわけではありません。
それでも、長時間歩いていると、この小さな差が積み重なります。PCTでは一日30〜40kmほど歩くことがありました。一歩だけを考えれば、ポールを使っても使わなくても大きな違いを感じないかもしれません。しかし、それが何万歩も積み重なります。
僕はこの「小さな負担の差」が、長距離では大きくなると考えています。
研究でもトレッキングポールによる下肢負担の変化が確認されている
これは僕だけの感覚ではありません。
トレッキングポールを使った歩行については、これまで複数の研究が行われています。例えば、13人の成人を対象とした研究では、ポールを使用した歩行で、垂直方向の床反力や膝関節にかかる圧縮方向の力などが低下しました。研究では、ポールを使うことで下肢への負荷が変化したと報告されています。
また、山歩きを対象にした研究では、ポールを使用したグループで、歩行後の筋力低下や筋肉痛などの指標が一部抑えられました。特に24〜48時間後の筋肉痛が少なく、歩行後の筋機能低下も小さかったと報告されています。
これは、僕がロングトレイルで感じていた、「今日の疲労を少しでも明日に残したくない」という考えとも相性の良い結果です。ただし、研究結果を「ポールを使えば疲れない」と解釈するのは適切ではありません。
ポールを使うことで腕や上半身も使うため、酸素摂取量や心拍数が高くなった研究もあります。つまり、負担が消えるのではなく、身体の使う場所が変わると考えた方が分かりやすいでしょう。
下り坂では特にポールを使いたい
僕がポールの恩恵を強く感じるのが、下りです。登りでは自分の身体を上へ運ぶ必要があります。一方、下りでは身体を下へ落としながらブレーキをかける必要があります。特に長い下りでは、太ももへの負担を感じやすくなります。
研究でも、ポールを使った下り歩行では、足首・膝・股関節周辺の関節モーメントや、一部の衝撃を吸収する力が低下したと報告されています。さらに、バックパックを背負った条件でも下肢関節への負荷低減が確認されています。
僕自身も長距離を歩いていると、「下りでどれだけ脚を残せるか」は非常に重要だと感じます。今日の下りで太ももを使い切ってしまえば、翌日の登りで苦しくなるからです。
トレッキングポールは「疲労をなくす道具」ではない
ここは誤解してほしくないところです。トレッキングポールを使ったからといって、登山が楽になるとは限りません。ポールを使うことで上半身も動員されます。
実際、研究ではポール使用時に酸素摂取量や心拍数が増加した例もあります。一方で、主観的な運動強度は変わらなかったり、荷物を背負った歩行では主観的な負担が低下したりする研究もあります。
つまり、「疲労がなくなる」のではなく、「負担を身体の一部に集中させにくくする」と考えるのが近いと思います。僕にとっては、この違いが長距離歩行で重要でした。
正しい使い方をすると、歩き方そのものが変わる
トレッキングポールは、ただ地面に突けばいい道具ではありません。僕は、正しい使い方を身につけることもポールを使うメリットの一つだと考えています。ポールを使って歩くことで、
- 腕を振る
- 歩幅を安定させる
- 身体の軸を保つ
- 上半身と下半身を連動させる
- 地面へ接地する場所を意識する
といったことを考えるようになります。最初から完璧に使う必要はありません。まずは、歩幅に合わせて自然にポールを動かすところから始めれば十分です。
平地では強く突かない
平地でポールを使うときは、身体を持ち上げようとして強く突く必要はありません。自然に腕を振り、歩行のリズムに合わせてポールを接地させます。ポールへ全体重を預けるというより、「第三、第四の脚を使う」くらいの感覚から始めると分かりやすいと思います。
登りでは身体を前へ運ぶ補助にする
登りでは、ポールを後ろへ押すように使います。腕だけで身体を引き上げるのではなく、脚の動きと合わせて使います。ポールを使うことで上半身も運動に参加するため、急な登りでは歩行のリズムを作りやすくなります。
急傾斜でのポール歩行については、研究でも主観的な運動強度が低下した報告があります。ただし、エネルギー効率そのものの改善は小さいとされています。
下りではブレーキとして使う
下りでは、ポールを身体の前方へ置きすぎないことが重要です。前へ突き出しすぎると、身体が後ろへ反りやすくなります。僕は、足元の状態を確認しながら、ポールで身体を支えるように使います。
特に急な下りでは、一歩一歩の衝撃を分散する意識で使うと、脚への負担を抑えやすくなります。
トレッキングポールがいらない人は?

ここまでポールのメリットを書いてきましたが、僕は全員に購入をすすめたいわけではありません。むしろ、短時間の登山なら無理に購入しなくてもいいと思っています。
例えば、
- 2〜3時間程度の軽い登山
- 整備されたハイキングコース
- 荷物が軽い
- 登山経験が少なく、まず歩くことに慣れたい
- 装備を最低限にして始めたい
- 屈強な戦士
という場合です。
このようなケースなら、トレッキングポールがなくても大きな問題にならないことが多いでしょう。僕なら、最初からすべての登山装備を揃えるのではなく、「本当に必要なものから買う」という考え方をします。
日帰り登山なら何時間からポールを使う?
明確に「○時間以上なら必須」という基準はありません。そもそも、人によってペースが違うし、身近にある山によって標高差も異なるからです。急勾配な登りと下りが連続するような場所では、正直な話数時間の日帰り登山でも欲しい、と感じるでしょう。
ただ、僕自身の感覚としては、4時間程度を目途に大きく変化すると思っています。
1~3時間程度
無理にポールを買う必要はないと思います。それよりも、優先度の高い装備を準備しましょう。また、日頃のウォーキングなどで体を鍛える事も重要です。自分なりに足腰をしっかりと鍛え、まずは体力をつける段階でしょう。
4〜6時間程度
ポールを使うメリットを感じやすくなってきます。特に下りが長いコースなら、持っていく価値があります。勾配がキツク、上り下りが激しくなってくると半日の登山でも非常に足腰に疲れがたまります。翌日に繰り越さない、体力に余力を残すためにも、トレッキングポールをもっていきましょう。
6時間以上・縦走
僕ならポールを持っていきます。長時間歩くほど、一歩一歩の負担が積み重なるからです。半日以上歩く場合、経験上ポール未使用だと足腰が限界に近づいています。背負っているザックに寄りますが、縦走にも成れば、かなりの重量です。
※※これはあくまで僕自身の基準であり、医学的・公式な時間基準ではありません。個人的な感想です※※
ロングトレイルでは「翌日のため」に使う
ロングトレイルで僕が一番大切にしているのがここです。普通の登山なら、「今日頑張って登って、下山したら終わり」でもいいかもしれません。しかしロングトレイルでは違います。
- 今日30km歩いたら、明日も30km歩く。
- 今日40km歩いたら、明日も歩く。
その繰り返しだからこそ、「今日どれだけ歩けるか」ではなく、「明日も歩ける状態で終われるか」を考える必要があります。トレッキングポールは、そのための道具の一つだと僕は考えています。
軽いハイキングでも使っていい
一方で、ポールを使うのはロングトレイルだけではありません。僕は、短いハイキングでも使っていいと思っています。理由は、ポールを正しく使う練習になるからです。
いきなり長距離の縦走でポールを使っても、うまく扱えるとは限りません。様々な場所でしっかりと利用しておきましょう。
- 平地で歩く。
- 登りで使う。
- 下りで使う。
- 階段で使う。
こうした経験を積んでおけば、本番でも自然に使えるようになります。そして、ポールを使った歩行に慣れてくると、自分の歩き方を意識する機会も増えます。僕はこれもポールの価値だと思っています。
トレッキングポールのデメリット

もちろん、ポールにはデメリットもあります。無理矢理作っているようなものですが、調べてみると幾つかの使わない理由があるようです。
- 荷物が増えて重量になる
- 両手がふさがってしまう
- ポールに依存してしまう
- 使って歩く方法が分からない
このような意見があるのを耳にしました。
荷物が増える
当然ですが、ポールそのものの重量が増えます。軽量化を徹底したい人にとっては、この重量も無視できません。軽量化を推し進めると、カーボン系のポールに行きつくことになります。カーボンポールだと、値段は高くなりますが頑丈で軽量です。
一方、安価に購入する場合はアルミポール(ジュラルミンポール)になるでしょう。
両手が塞がる
岩場をはじめ両手を使わなければならない場面や、行動食を食べたり飲み物をのんだり。そういった場面では、両手を使用したいのですが、ポールを持っていると使えません。ポールを腕にかけて行動食などは食べられますが、周囲に気を付けながらというのはストレスです。
そうした場所では、ポールを収納する必要があります。この出し入れ、というのも結構手間です。
正しく使わないと効果を感じにくい
ポールをただ持っているだけでは意味がありません。歩行のリズムに合わせて使う必要があります。特に、腕だけで身体を引っ張ろうとすると、今度は腕や肩が疲れるため要注意です。また、ポールは一本では少し不足です。
それは浮石の確認には使えますが、歩行補助の観点では、ポール二本使用が正しいです。膝痛緩和や安定化を狙うなら1本では不十分で2本使う必要があります。
トレッキングポールを使わない方がいい場面
ポールは万能ではありません。当然、収納して歩くべき超えるべき場所が沢山あります。
- 両手を使う必要がある岩場
- 鎖場
- はしご
- 手を使ってバランスを取る急斜面
- 混雑した登山道
- ポールが周囲の人に当たる可能性がある場所
などでは、収納した方が安全です。「せっかく持ってきたから最後まで使う」必要はありません。必要な場所で使い、必要のない場所ではしまう。これが基本だと思います。
トレッキングポールは何本使う?
僕は基本的に2本を使うことをおすすめします。1本でも身体を支えることはできますが、2本使うことで左右のバランスを取りやすくなります。特に長距離歩行では、左右どちらかだけに負担が偏らないようにすることが重要です。また、一本では歩行姿勢が安定しない偏った使用になります。
まとめ|トレッキングポールは要らない訳がない
トレッキングポールは、すべての登山者に必要な装備ですが優先順位は低いです。3時間程度の軽い日帰り登山なら、なくても問題なく歩けるでしょう。一方で、歩く距離が長くなるほど、僕はポールを使うメリットが大きくなると感じています。
特にロングトレイルや縦走では、「今日のため」ではなく「明日のため」に使う。これが僕にとってのトレッキングポールです。ポールを使うことで身体への負担が完全になくなるわけではありません。
しかし、下肢への負荷を分散したり、歩行時の身体の使い方を変えたりできる可能性があります。研究でも、下肢への負荷や山歩き後の筋損傷・筋力低下に関連する指標が改善した報告がある一方、酸素摂取量などが増える報告もある為、用意しておくべきでしょう。

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