僕は登山ザックを選ぶとき、容量や重量ばかりを気にするよりも、自分の身体に背面長が合っているかを確認することの方が重要だと考えています。特に長時間歩くロングトレイルでは、ザックを背負っている時間が何時間にもなります。
超軽量系のULでない限りは、ザックの背面長を気にして選ぶ方がいいでしょう。この記事では、背面長の測り方だけではなく、
- 背面長をどう合わせるのか
- ヒップベルトはどこに置くのか
- 肩のストラップはどの程度締めるのか
- 肩に当たるパッドはどこまで接触させるのか
- なぜショルダーハーネスの取り付け位置が高いのか
- 背面長が合っているかをどう確認するのか
まで、僕が6000km以上歩いてきた経験と、バックパックのフィッティングに関する資料をもとに解説します。
結論|背面長は「肩に合わせる」のではなく身体全体で確認する
ザックの背面長を合わせるときは、肩ベルトの位置だけを見るのではなく、ヒップベルト・背中・肩・ザック全体が自然につながっているかを確認します。基本的な流れは、
- 背面長を測る
- ザックに実際の荷物を入れる
- ヒップベルトを腰骨の位置に合わせる
- 背面長を調整する
- 肩ベルトを身体に沿わせる
- 必要に応じてロードリフターやスタビライザーを調整する
- 背中・肩・腰に隙間や局所的な圧迫がないか確認する
モンベルも大型バックパックのフィッティングでは、使用時に近い10kg程度の荷物を入れ、腰骨を基準にヒップベルトを固定したうえでショルダーハーネスを調整する方法を案内しています。
つまり、空のザックを背負って「なんとなく合っている」と判断するのでは不十分です。
背面長とは何?ザック選びで重要なのか

背面長とは、簡単に言えば自分の背中の長さとザックの背面システムを合わせるための寸法です。身長が同じ人でも、胴体の長さは同じとは限りません。そのため、ザックを選ぶときは身長だけで判断するのではなく、背面長を確認する必要があります。
背面長の重要性
一般的なバックパックの計測では、首の付け根にある第7頸椎(C7)から、骨盤上部の左右にある腸骨稜までを測ります。
第7頸椎は、首を前に倒したときに首の付け根で大きく出っ張る骨です。腸骨稜は、腰に手を置いたときに触れる骨盤上部の出っ張った部分です。REIやOspreyも、C7から腸骨稜までを測る方法を背面長の計測方法として案内しています。
メーカーによって背面長の定義やサイズ表は異なります。
そのため、自分で測った数値をそのまま全メーカーに当てはめるのではなく、購入するザックのメーカーが示している計測方法・サイズ表を確認してください。
背面長の測り方
一人で測ることもできますが、できれば誰かに測ってもらった方が正確です。ここでは、良く推奨されている計測方法の一つを紹介します。
①首を前に倒してC7を探す
まず首を前に僅かに倒します。首の付け根付近に大きく出っ張る骨があります。これが第7頸椎、C7です。ここが背面長の上側の基準になります。
②腰骨の位置を確認する
次に腰の左右に手を置いて、骨盤の一番上にある出っ張りを探します。これが腸骨稜です。左右の腸骨稜を結んだ位置を背面長の下側の基準にします。
骨盤の出っ張りを捜すのが難しい場合、臍を基準にしましょう。臍の真裏辺りが、大体の下部基準になります。
③C7から腸骨稜までを測る
背筋を自然に伸ばし、C7から腸骨稜までを測ります。
背骨は完全な直線ではないため、メジャーを身体に沿わせて測ることが重要です。Ospreyも、C7から腸骨稜までを測る際には背骨のカーブに沿わせるよう案内しています。
そして、その数字を購入するザックのサイズ表と照らし合わせます。
背面長は測った数字だけで決めない
ここは意外と重要です。背面長を測って、
「自分は52cmだから、ザックも52cmにすればいい」
と考えて終わりではありません。
実際にザックを背負ったときに、身体とザックがきちんとフィットしているかを確認する必要があります。なぜなら、身体の形は人それぞれであり、同じ背面長でも肩幅や肩の形、腰の位置などが異なるからです。
Ospreyも、身体の形やサイズには個人差があり、調整可能なザックでは実際の身体に合わせてフィッティングを調整することを重視しています。だから僕は、背面長の数字はスタート地点であって、ゴールではないと考えています。
背面長を使用したフィッティング方法

ここでは、実際に背面長を計測した後に行うことを紹介します。背面長が判明して自分のサイズを選ぶことができたら、正しいフィッティングを行いましょう。
ザックを調整するときは実際の荷物を入れる
背面長を合わせるときは、できるだけ実際に使う状態に近づけます。モンベルは大型バックパックのフィッティングで10kg程度の荷物を入れることを推奨しています。
Ospreyも、空のザックでは適切な調整が難しいため、実際に近い重量を入れて調整することを案内しています。実は、ザックの実重量によって重心が変わる為、微調整が必要になるのです。
10kgも荷物を入れると変わる
- 肩ベルトが浮く
- ザックが後ろに倒れる
- 腰にうまく荷重が乗らない
- ザックが左右に揺れる
上記問題が、10kg程度の荷物を入れると発生します。ザックは「商品棚に置かれている状態」ではなく、「荷物を入れて歩いている状態」で調整するものです。
背面長を合わせるときはヒップベルトから確認する
実際にザックを背負ったら、まずヒップベルトの位置を確認します。腰骨の位置にヒップベルトを合わせ、左右均等に締めます。
モンベルの場合、大型バックパックでは腰骨の左右の出っ張りをランバーパッドの中央部で包み込むようにしてヒップベルトを固定する方法が案内されています。
「腰回りの一番細いところ」に合わせるのではなく、ザックのヒップベルトが想定している骨盤の位置に合わせることを意識しましょう。
ヒップベルトの役割
ヒップベルトの役割は、単純にザックを落とさないことだけではありません。肩にかかる荷重の一部を骨盤側へ分散させる役割があります。そのため、ヒップベルトの位置がずれている状態で肩ベルトだけ調整しても、正しいフィッティングにはなりません。
肩ベルトは「強く締める」のではなく身体に沿わせる
ヒップベルトを固定したら、次に肩ベルトを調整します。ここで僕が注意したいのは、「肩ベルトを強く締めればいいわけではない」ということです。
肩ベルトは肩から脇にかけて身体に沿わせ、隙間ができない程度に調整します。モンベルもショルダーハーネスが身体に密着するように調整することを案内しています。
ショルダーハーネスは優しくする
ショルダーハーネスは、肩に強く食い込むほど締める必要はありません。肩ベルトでザックを無理やり身体に押し付けるのではなく、腰で支えながら、肩ベルトでザックを身体に追従させるというイメージです。
食い込むほどにしっかりとベルトを締めてしまうと、肩を痛めてしまいます。長時間の歩行には向きません。
ショルダーハーネスはどこまで接触させる?
ここも誤解されやすいところです。ショルダーハーネスは、肩を覆うように接触していればいいという単純な話ではありません。
今回見つけた資料では、接触圧力について、
接触圧力=身体表面を垂直方向に押す力÷接触面積
と説明されています。
つまり、同じ荷重でも接触する面積が広くなれば、局所的な圧力は分散できます。ただし、ここで重要なのが、接触圧力だけを見ても、肩にかかっている荷重全体が分かるわけではないという点です。
ザック全体の荷重を分散させる
資料でも、最大圧力が低下した場合には、
- 肩にかかる荷重が肩の中で分散した
- 肩にかかっていた荷重の一部が腰などに分散した
という2つの可能性があるとされています。
「肩の圧力が低い=正しいフィッティング」
とは限りません。僕はここがザックを調整するときにかなり重要なポイントだと思います。
肩を痛くしないことだけを目標にするのではなく、ザック全体で荷重がどう分散されているかを見る必要があります。
腰荷重のみで支えるのも間違いなのか
少なくとも肩に高負荷な状態よりはいいです。しかし、腰で支えるとはいえすべての荷重を腰だけで支える必要はないでしょう。しっかりと肩も当てて、荷重を分散させることで正しくザックを背負い荷重を分散。そして、安定して背負い歩き続ける事ができます。
背中とザックの間に隙間はない?
背中とザックの間に大きな隙間がないかを確認します。モンベルも、ヒップベルトとショルダーストラップを調整した後、鏡などを使って背中とパックの間に隙間がないか確認するよう案内しています。
ここで隙間が大きければ、背面長や背面の形状が身体に合っていない可能性があります。
モンベルの大型バックパックでは、ヒップベルトの位置を動かすことで背面長を調整できます。ショルダーハーネスの付け根が背中から浮いている場合は、ヒップベルトの位置を上げて背面長を短くする手順が案内されています。
背面長を確認するときのチェックポイント
最後に、簡単にですがザックをフィッティングした時の背面長の確認事項を一覧表にしました。実際に背負う際には確認してみてください。
| 確認する場所 | チェックすること |
|---|---|
| ヒップベルト | 腰骨の位置に自然に収まっているか |
| 肩ベルト | 肩から脇にかけて浮いていないか |
| 背中 | ザックとの間に大きな隙間がないか |
| 肩ベルトのパッド | 局所的に強く食い込んでいないか |
| ザック上部 | 後ろに大きく倒れていないか |
| 左右 | 片側だけに偏っていないか |
| 歩行時 | ザックが大きく揺れないか |
なぜショルダーハーネスの取り付け位置は高いのか?

ここは今回の記事で特に面白いところです。ザックを見ると、
「肩ベルトの取り付け位置って、どうしてこんなに上にあるんだろう?」
と思うことがあります。
これは単純に「高ければ高いほど良い」という話ではありません。
背の高いバックパックでは、上部を安定させることと身体へのフィットの間にトレードオフがあることが示されています。
取り付け位置を高くすると、ザック上部を安定させやすくなる一方で、身体との位置関係によっては荷重が局所的に集中したり、ザックがずれて荷重が動いたりする可能性があります。
だからこそ、ロードリフターなどの調整機構が重要になります。
ロードリフターは何をしている?
ショルダーハーネスの上部付近からザック本体につながっているストラップが、ロードリフターです。このストラップを調整することで、ザックの上部を身体側へ引き寄せます。
モンベルもスタビライザーについて、パックの揺れを抑え、身体に引き寄せる機能として説明しています。つまり、背面長を合わせた後にロードリフターなどを調整することで、
ザックの上部が身体から離れすぎないようにすることができます。
ただし、これも強く締めればいいわけではありません。強く引きすぎて肩を押し下げるような状態になれば、せっかく調整した背面長が崩れてしまいます。
「背面長を合わせる」と「ザックを身体に固定する」は別の作業
ここまでを整理すると、背面長調整とストラップ調整には役割の違いがあります。
| 調整する部分 | 主な役割 |
|---|---|
| 背面長 | ザックと身体の長さを合わせる |
| ヒップベルト | 荷重の一部を骨盤側へ分散する |
| 肩ベルト | 肩・脇に沿わせてザックを身体に追従させる |
| ロードリフター | ザック上部を身体側へ引き寄せる |
| チェストストラップ | ショルダーハーネスの広がりや揺れを調整する |
| コンプレッションストラップ | 荷物やザック本体の変形・揺れを抑える |
バックパックの各部品にはそれぞれ異なる負荷を抑える役割があると整理されています。「全部のストラップを締めればフィットする」というものではありません。それぞれの役割を理解して調整することが重要です。
ザックのフィッティングは「接触しているか」だけでは判断できない
例えば肩の最大圧力が下がったとしても、
- 肩の広い範囲に荷重が分散した
- 腰に荷重が移った
という2つの可能性があります。だから、ザックのフィッティングでは一つの場所だけを見て判断しないことが重要です。
僕なら、肩・脇・背中・腰・歩行時の揺れをまとめて確認します。
歩行時は少し左右に揺れるくらいがいい
極端な振り子運動をする必要はないですが、荷物が重たい時は歩行の揺れに従って、ある程度揺れる程度の自由度が欲しいです。重たいザックが背中に沿って固定されていると、長距離を歩くという点では、歩きずらさを感じる事がありました。
歩行時に発生する左右の揺れを無理に体に固定して相殺するよりも、揺れを利用して歩くくらいが簡単でした。
背中が密着していない
ザックと背中の背面パッドが密着しない事があります。これは、背面長だけではなくザックの重心やショルダーハーネスが正しく設定されていないことが原因で起こりやすいです。背中に大きく隙間が空いていると、ザックに後ろ向きに引っ張られ続ける事になります。肩の疲労もたまりますし、無意識に前傾姿勢になり歩行姿勢も崩れてしまいます。
腰回りに関して
腰荷重をしっかりするうえで一番重要です。腰荷重をしっかりと行い、ザックを支えるのは一番重要です。腰荷重ができているのか不明な場合は、専門店でフィッティングを行い購入することにしましょう。
背面長が合っているか最後に確認する方法
僕なら最後に、次の順番で確認します。念のために店員さんや、家族などと確認し自分で見えていない所や、細部にわたっても確認をするようにしましょう。ザックはそう簡単に壊れないですし、場合によっては一生ものになります。
①正面から確認する
左右のショルダーハーネスが均等になっているか確認します。片側だけ強く引っ張られていないかも見ます。
②横から確認する
ザック上部が大きく後ろに倒れていないか確認します。
ロードリフターを調整して、必要以上に身体から離れない状態にします。
③背中を確認する
背面パネルと身体の間に、不自然な隙間がないか確認します。
④肩を確認する
肩ベルトが浮いていないか、逆に強く食い込んでいないか確認します。
⑤歩いて確認する
最後は実際に歩きます。ザックは静止しているときだけ快適でも意味がありません。
- ザックが左右に大きく揺れないか
- 上下に大きく動かないか
- 肩だけが痛くならないか
- 腰だけに負担が集中しないか
- 腕を自然に振れるか
Ospreyも、初期調整後は実際に荷物を入れて試し歩きをし、使用中にフィッティングを微調整することが重要だとしています。
僕が6000km以上歩いて感じる「背面長」の重要性
僕はこれまでPCTや四国遍路、国内の登山などを含めて6000km以上歩いてきました。その経験から感じるのは、長距離を歩くほど、道具そのものだけではなく「道具をどう身体に合わせるか」が重要になるということです。
最近はULという言葉が広がって、ザックの軽さや装備重量に注目が集まりやすくなりました。もちろん、荷物を軽くすることには大きなメリットがあります。しかし、僕はそれと同じくらい、今使っているザックを自分の身体にきちんと合わせることも重要だと考えています。
10kgのザックを背負うとしても、身体にうまく荷重を分散できている10kgと、肩だけに負担が集中している10kgでは、歩いているときの感覚は変わります。だから僕は、ザックを買い替える前に、一度自分の背負い方を確認してみることをおすすめします。
登山ザックの背面長調整で確認したいこと
最後に、今回の内容をまとめます。
| 項目 | 正しく調整するための確認 |
|---|---|
| 背面長 | C7から腸骨稜までを測り、メーカーのサイズ表と照合 |
| 荷物 | 実際の使用に近い重量を入れて調整 |
| ヒップベルト | 腰骨を基準に位置を合わせる |
| 背面 | ザックとの間に大きな隙間がないか |
| 肩ベルト | 肩から脇に沿わせ、強く締めすぎない |
| パッド | 接触面積だけでなく局所的な圧迫も確認 |
| ロードリフター | ザック上部を身体側へ引き寄せる |
| チェストストラップ | 苦しくならない範囲で揺れを抑える |
| 左右 | 片側に荷重が偏っていないか |
| 歩行時 | 揺れ・肩への圧迫・腰への負担を確認 |
背面長は、数字を合わせれば終わりではありません。実際に荷物を入れ、ヒップベルトを基準にザックを身体へ合わせ、肩・背中・腰の状態を確認する。
そして最後は、実際に歩いて調整する。これが僕が考える、登山ザックの正しい背負い方です。
なお、モンベルの大型バックパックでは、ヒップベルトの位置を調整して背面長を合わせる方法が公式に案内されています。アルパインパック60についても、実際の調整方法や6000km以上使ってきた使用感については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→ モンベル「アルパインパック60」6000km使用レビュー
背面長を測り正しくフィッティングしてザックを選ぶ
ザック選びで重要なのは、やはり背面長です。各ブランドでザック容量や構造、拘りや生地が変わります。しかし、正しく背面長を調整して腰荷重を中心に分散する、というのはどこも同じでしょう。自分でしっかりと背面長を計測し、サイズの合った自分にピッタリなザックを選びましょう。
これまでに執筆した記事

