登山でテント泊をするなら、寝袋と同じくらい重要なのがスリーピングマットです。僕はこれまで、PCTや四国遍路、国内のロングトレイル、野宿などでさまざまなマットを使ってきました。
その中でも、エバニューのトレイルマット180はPCTで130日、野宿で10日、四国遍路で26日使用しています。100cmタイプも国内の縦走やロングトレイルなどで約50日使ってきました。
長期間使って分かったのは、登山マットは「軽ければいい」「厚ければいい」という単純な道具ではないということです。
この記事では、登山用マットを選ぶときに確認したいポイントを、実際のロングトレイルでの使用経験も交えながら紹介します。

登山マットを選ぶときに確認したい7つのポイント
最初に、登山用マットを選ぶときの個人的なポイントをまとめます。
| 選ぶポイント | 確認したいこと |
|---|---|
| 種類 | クローズドセル・エア・インフレーター |
| 厚み | 寝心地と重量・収納性のバランス |
| R値 | 地面からの冷えをどれだけ防ぎたいか |
| 長さ | 頭から踵まで必要か、部分的でよいか |
| 幅 | 寝返りを打ったときに十分か |
| 重量 | ロングトレイルや縦走なら特に重要 |
| 収納性 | ザックの中・外でどう運ぶか |
この中でも、初めて購入するなら「種類」「サイズ」「R値」から考えると選びやすくなります。
登山マットにはどんな種類がある?

登山で使われるスリーピングマットは、大きく分けると次の3種類があります。
- クローズドセルマット
- エアマット
- インフレ―タマット
基本的にはこの三つで、登山で使用されることが多いのは「クローズドセルマット」と「エアマット」の二つです。
クローズドセルマット
フォーム素材でできたマットです。広げるだけで使えるため、空気を入れる必要がありません。僕が現在メインで使っているのもこのタイプです。
代表的な特徴は、
- パンクしない
- 設営が簡単
- 比較的軽い
- 雑に扱いやすい
- 地面の上でそのまま使える
- 収納時にかさばりやすい
といったところです。メーカーによって形状は異なり、ロール式と折りたたみ式があります。ロール式の方が収納サイズが大きい傾向にあります。
僕がメインで使用しているマット
僕がメイン使用しているのは、エバニューのTrail mat 180です。これは1,800×500×9mm、320gで、発泡ポリエチレン製です。兄弟製品に、100cmサイズもあります。
メーカーは100を肩口からお尻まで、180を全身をカバーするサイズとして位置付けています。僕が使っているTrail mat 180はロール式なので、朝の撤収では正直かなり苦労します。
適当に丸めただけではザックに入りません。それでも、パンクを気にせず地面に直接敷けることや、傷が付いてもそのまま使えることは、長期の旅では大きなメリットでした。
エアマット
空気を入れて使用するタイプです。収納すると非常にコンパクトになる製品が多く、登山では人気のタイプです。空気を入れているため、基本的には地面と直接接触することはありません。
クローズドセルマットと比べると、
- コンパクト
- 厚みを出しやすい
- 寝心地を調整しやすい
- 高いR値を持つ製品がある
という特徴があります。一方で、空気を入れる必要があり、パンクや空気漏れへの対策も必要になります。現在販売されている製品には、R値が明記されたものも多くあります。例えばモンベルのU.L.エアパッドシリーズでは、サイズによって重量が異なり、R値1.4とされています。
空気入れはコンパクトなものがある
PCTで知ったのですが、USBケーブルをつないで自動で空気を送ることができるものがあります。これは非常に便利で。疲れ切った体で頑張って空気を入れる必要がありません。抜くときの苦労は残っていますが、これでストレスは7割減でしょう。僕も人の空気を入れるのを手伝っていましたが、苦労します。
インフレーターマット
内部にフォームを入れ、空気とフォームの両方を利用するタイプです。エアマットとクローズドセルマットの中間のような性格を持つ製品もあります。空気だけを利用するタイプよりもフォームの存在によって構造や寝心地が異なり、製品によってはバルブを開くだけである程度膨らみ、最後に空気を追加して硬さを調整できます。
ただ、寝心地に関しては良い処取りなのですが重量と収納サイズも微妙な感じです。そのため、登山者の中ではあまり使用している人を見ていないです。
クローズドセルとエアマット、どちらを選ぶ?

僕はここを「どちらが優れているか」ではなく、自分が何を優先するかで決めるべきだと思っています。僕はその結果、大きくて重いけどクローズドセルマットを選んでいます。
| 項目 | クローズドセル | エアマット |
|---|---|---|
| 設営 | 広げるだけ | 空気を入れる |
| パンク | なし | 可能性あり |
| 収納 | かさばりやすい | コンパクト |
| 寝心地 | 硬め | 柔らかくしやすい |
| 地面の凹凸 | 伝わりやすい | 伝わらない |
| 重量 | エアマットより重い | 軽量モデルも多い |
| 断熱性 | R0.7 ~ R2の範囲が多い | R値の高い製品もある |
| 雑な扱い | 得意 | 注意が必要 |
| 長期使用 | 扱いやすい | 補修などが必要になる場合あり |
僕自身はエアマットを使ったとき、身体の痛みについては特に問題ありませんでした。ただ、寝返りを打ったときの音と、マットの上で身体が浮くような感覚が苦手でした。そのため、僕の場合はエアマットよりも、多少硬くても身体が安定するクローズドセルマットのほうがよく眠れます。
これはあくまで僕の感覚です。エアマットのほうがよく眠れる人も当然います。「寝心地が良いマット」ではなく、「自分がよく眠れるマット」を選ぶことが重要です。
クローズドセルマットとエアマットの違いについては、下記事でさらに詳しく比較しています。

登山マットの厚みは何mm必要?
マットを選ぶときに気になるのが厚みです。基本的には厚みが増えるほど、地面の凹凸から身体を守りやすくなります。ただし、厚いほど必ず暖かい、とは限りません。
モンベルも、マットは厚みが増えるほどクッション性に優れる一方、厚みだけで断熱性を判断することはできないと説明しています。断熱性は内部構造や素材などによっても変わるためです。構造と物質、そして厚みの三つでR値が決まってくるので、公表値を確認するようにしましょう。
寝心地と厚みは比例する
僕が使っているTrail mat 180は厚さ9mmです。数字だけを見るとかなり薄く感じますし、実際尖った石の上に寝れば石の感触は伝わります。地面が悪ければ肩や腰が痛くなることもあります。寝心地が抜群に良いかと言われると、正直非常に微妙です。
それでも、PCTや四国遍路で毎日のように使って、僕自身は大きな不満なく眠ることができました。ただ、テントを立てる場所、寝る場所を選んでいるからです。正直、厚みがもう少しあれば、と思う所です。やはり、1cm欲しい所ですね。
薄いマットが向いている人
- 荷物を軽くしたい
- 地面の状態を選べる
- 硬い寝床でも問題ない
- クローズドセルの耐久性を重視する
- ロングトレイルで毎日持ち運ぶ
厚いマットが向いている人
- 地面の凹凸が気になる
- 横向きで寝る
- 柔らかい寝心地が好き
- 冬の断熱性を重視する
- 荷物が多少重くなっても快適性を優先したい
ただし、冬のマット選びでは厚みだけを見るのではなく、後述するR値を確認してください。
登山マットのR値とは?
R値は、スリーピングパッドの断熱性を表す指標です。数字が大きいほど断熱性が高いと考えることができます。現在はASTM F3340という試験規格によるR値が使われており、異なるメーカー・種類のマットを比較するときの目安になります。
目安としてREIでは、
| R値 | 使用環境の目安 |
|---|---|
| 2未満 | 暖かい時期 |
| 2~3.9 | 涼しい時期 |
| 4~5.4 | 寒い時期 |
| 5.5以上 | 非常に寒い環境 |
としています。これはあくまで目安であり、実際の必要性能は気温だけでなく、地面の状態、寝袋、衣類、体質などによっても変わります。
冬山ならR値を確認する
夏のテント泊なら、R値をそれほど気にしない人もいるでしょう。しかし、寒い季節に使うならR値は重要な確認項目です。寝袋だけを見ていると忘れがちですが、身体は地面にも熱を奪われます。
そのため、冬用の寝袋を購入したとしても、マットの断熱性が不足していれば、想定した保温性能を十分に発揮できない場合があります。また、マットを重ねて使う方法もあります。
REIの解説では、同じ規格で測定されたR値なら、複数のマットを重ねた場合にR値を加算できると説明しています。僕自身も、クローズドセルマットを「単独で最高の性能を出す道具」というより、別のマットに追加して使う道具として考えることがあります。
特に軽量なクローズドセルマットなら、追加しても重量の増加を抑えやすいのがメリットです。なお、僕が長期間使用しているTrail matにはR値が公表されていません。PCTのSierraでは氷点下になる環境でも使用しましたが、僕自身は特に寒さを感じませんでした。
ただし、これは僕の使用経験にすぎません。R値が公開されていないマットについて、僕の経験だけを根拠に「何℃まで使える」と判断することはおすすめしません。
登山マットの長さはどれくらい必要?
マット選びでは、長さも重要です。
- フルサイズ
- ミドルサイズ
- ショートサイズ
が一般的にあり、購入時に選べるようになっています。ただ、僕は身長だけでマットの長さを決めないほうがいいと考えています。実際に寝る姿勢になり、自分の身体のどこまでマットが必要なのかを確認するほうが分かりやすいからです。
僕は身長173cmですが、Trail mat 180を約160cmにカットして使っています。頭の部分には枕を置くので、マットがなくても問題ありません。そこで、実際に寝転んで、肩から踵までを測って、自分に必要な長さを考えました。
この方法なら、身長だけでなく寝姿勢も考慮できます。
長いマットを買ってカットする方法が楽
ここはクローズドセルマットならではの考え方です。最初から短いマットを買うのではなく、大きめのマットを購入して、必要な長さにカットするという方法があります。僕自身が180cmのマットを約160cmにカットしています。
切り落とした部分も捨てませんでした。休憩時の座布団として使ったり、地面に座るときのシートとして使ったりできます。PCTの途中では、切り取った部分を見た知り合いから「これいいなぁ!」と言われ、そのまま譲りました。
その後も休憩用マットとして使われ、最後まで活躍していました。そのため、僕はクローズドセルマットを買うなら、少し大きめを買って後から調整する方法も十分ありだと思っています。

登山マットは「頭から踵まで必要」とは限らない
マットの長さについて考えるとき、僕が重要だと思うのが、「身体全部をマットに乗せる必要があるのか?」ということです。マットの役割を分割する方法もあります。具体的には、頭部は枕で足元は衣服、のような感じですね。
一方で、僕は踵をマットから出すのが苦手です。マットがないところに踵を置くと痛く感じるため、僕にとっては踵までカバーできることが重要でした。そのため、僕は100cmより180cmのほうが寝るためのマットとして使いやすいと感じています。
逆に、「肩から腰まであれば十分だろ」という人なら100cm程度でも成立します。必要な長さは身長だけではなく、自分がどこをマットに乗せたいかで決めると考えると選びやすくなります。
登山マットの幅は50cmで足りる?
長さと同じくらい、幅も確認してください。一般的な登山用マットには幅50cm前後の製品があります。僕が使っているTrail mat 100・180も幅50cmです。僕自身は普通に寝返りを打つことができます。
ただし、肩幅が広い人や、寝返りを大きく打つ人の場合、50cmでは狭く感じる可能性があります。マットの上に完全に収まって寝たい人は、幅広モデルも検討してください。特にエアマットには幅広モデルもあります。
モンベルでも、通常モデルとは別にワイドサイズを展開しています。
登山マットは軽量性だけで選ばない

登山用マットを軽量性だけで考えると、恐らくはエアマット一択です。軽くてR値が高いからです。しかし、僕は「眠れない」となるとエアマットがどれほど高性能でも使用しません。眠れないというのは致命的な欠陥だからです。軽量化の為に、不便を強いる事はしたくないのが本音です。
犠牲にするのは何かを考える
ロングトレイルでは、1gでも軽くしたいと思うことがあります。僕自身、長距離を歩く旅では荷物の重量をかなり意識してきました。そのため、マットも軽量性は重要な選択基準です。
ただし、「一番軽いマットを選べばいい」わけではありません。例えば100g軽いマットに変えた結果、睡眠に悩まされるでは意味がないのです。ロングトレイルでは、睡眠は翌日の行動にも関わります。
だから僕は、「何g軽くなるか」だけではなく、「何を犠牲にして軽くなるのか」を見るようにしています。
登山マットの収納性も重要
マットは、重量だけでなく収納方法も考えてください。特にクローズドセルマットは、エアマットと比べて収納時に大きくなりやすい傾向があります。
ロールタイプなら円筒状、折りたたみ式なら蛇腹状にできます。エアマットなら空気を抜いて小さく丸められる製品があります。ここはザックとの相性がかなり重要です。一番いいのはエアマットですが、クローズドセルマットを外付けしているハイカーも少なくないです。
ザックの中に入れるのが理想的
- 雨に濡れにくい
- 引っ掛けにくい
- 荷物が外に飛び出さない
ことがメリットです。デメリットはありませんが、強いて言えばザック内の容量をかなり使うことがあります。特に、クローズドセルマットを中に入れると随分と容量が減りますね。
僕はTrail matをザックのフレームとして内部に入れることもあります。この用途では100cmのほうが扱いやすいと感じます。180cmを丸めて入れると、ザックの中でかなり場所を取るからです。
ザックの外に付ける
外付けにすればザック内部の容量を節約できます。
- 木に引っ掛ける
- 岩にぶつける
- 雨に濡れる
- 落下する
といった問題があります。そのため、ロングトレイルなどで外付けする場合は、固定方法まで考えておく必要があります。マットをどう運ぶかは、購入前に一度考えておくと失敗しにくくなります。
また、外付けしたまま歩くときに岩にぶつけてバランスを崩すや強風に煽られるという危険もあります。十分に危険性を理解しておきましょう。
登山マットは何を優先するかで決める

ここまでを整理すると、こんな考え方になります。
| 重視すること | 向いている方向 |
|---|---|
| とにかく軽くしたい | 軽量クローズドセル・軽量エア |
| コンパクトにしたい | エアマット |
| パンクが心配 | クローズドセル |
| 設営を簡単にしたい | クローズドセル |
| 地面の凹凸を減らしたい | 厚手のマット・エア |
| R値を重視したい | R値が明記された製品 |
| 硬めの寝心地が好き | クローズドセル |
| 柔らかい寝心地が好き | エア・インフレーター |
| ロングトレイルで雑に使いたい | クローズドセル |
| ザック容量を節約したい | エアマット |
ただし、これはあくまで大まかな傾向です。実際には製品ごとの差があるため、最終的には個々のスペックを確認してください。
僕がクローズドセルマットを選ぶ理由
僕はこれまで長期間マットを使ってきましたが、現在もクローズドセルマットを選んでいます。理由は単純です。
多少硬くても、多少寝苦しさがあってもいい。その代わり、壊れにくく、扱いやすく、気を使わずに使えるほうが僕には合っているからです。
Trail mat 180は、PCTで130日、野宿で10日、四国遍路で26日使いました。木やトゲ、岩などに引っ掛けたことで傷やへこみができ、角が潰れたり破れたりした部分もあります。それでも現在も使用しています。
寝心地についても、地面がきれいに選べる場所なら、9mmという薄さでも僕は問題なく眠れています。もちろん、尖った石や大きな石がある場所では、その感触は伝わります。
だから、クローズドセルマットならどんな場所でも快適というわけではありません。地面を選ぶことも含めて使う道具だと僕は考えています。
登山マットを選ぶなら「自分の睡眠」を基準にする
登山マットには、さまざまな選択肢があります。だからこそ、「一番おすすめのマット」を探すだけでは、自分に合うものを見つけにくいと思います。他人と自分の差を明確に知るべきです。
- どこで使うのか。
- 何泊するのか。
- どれくらい荷物を軽くしたいのか。
- どの程度の硬さなら眠れるのか。
- 身体のどこまでマットが必要なのか。
このあたりを考えてみてください。僕の場合は、ロングトレイルで毎日持ち運ぶこと、多少硬くても問題なく眠れること、パンクを気にしたくないことから、クローズドセルマットを選んでいます。
そしてサイズについては、必要な長さより少し大きいものを買い、必要ならカットするという考え方をしています。特にクローズドセルマットは、長すぎても後から調整できます。
僕が使っているTrail mat 180も、180cmのままではなく約160cmにカットしました。逆に最初から短いものを買ってしまうと、あとから長くすることはできません。そのため、サイズで迷ったときは、「自分が寝たときに肩から踵までどれくらい必要か」を一度測ってみてください。
マット選びは、カタログ上の数字だけで決めるより、自分の寝方から逆算したほうが失敗しにくいと思います。
まとめ
登山マットを選ぶときは、次の7つを確認してください。
- 種類:クローズドセル・エア・インフレーターから選ぶ
- 厚み:寝心地だけでなく重量や収納性とのバランスを見る
- R値:寒い季節ほど断熱性を確認する
- 長さ:身長だけでなく肩から踵までの必要範囲を考える
- 幅:寝返りを考えて十分な幅を選ぶ
- 重量:ロングトレイルでは重要な要素
- 収納性:ザックの中に入れるか外付けするかまで考える
僕自身はクローズドセルマットを選んでいます。
ただし、エアマットが合わないと言っているわけではありません。僕には、エアマットの寝返り時の音や浮遊感が合わなかった。一方で、クローズドセルマットには、石の感触が伝わる、かさばるといった欠点があります。
結局のところ、マット選びで大切なのは「スペック上の快適性」ではなく、自分が翌朝までしっかり眠れることです。
自分が何を優先したいのかを決めてから、重量・サイズ・厚み・R値を比較してみてください。

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